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菌糸瓶の選び方、使い方

自然界、森の中では木が倒れ月日が経過すると、やがて腐り始めます。

クヌギ、コナラ、ブナ、エノキ、ヤナギなどの種類は、白色腐朽菌による分解で、硬い木を柔らかい木に変えてしまいます。

そして、この白色腐朽菌で分解された木の中に、クワガタは好んで産卵をします。

産卵した卵はやがて孵化し、幼虫は白色腐朽菌で分解された木を食べながら、大きくなり羽化の時を待ちます。

この木はクワガタにとって食料でもあり、外敵から守る為のシェルターでもあります。

クワガタの幼虫飼育で使う菌糸瓶は、白色腐朽菌で分解された木を瓶の中に再現したもので、ある意味では自然に近い状態かもしれません。

そして白色腐朽菌の正体は、きのこ菌です。

ちなみにカブトムシの幼虫や、一部のクワガタには使用できません。

■ 菌糸瓶の作る過程を簡単に説明すると ■

クヌギなどの木を粉々に粉砕した「オガコ」を加水して、添加物などを混ぜ、加熱殺菌をした後にきのこ菌を埋め込み、自然にきのこ菌を増殖させます。

自然の状態と違う部分は、添加物を混ぜる部分で、きのこ菌を増殖させる栄養の目的で入れるのであって、後から食べるクワガタの為ではありません。

それでも質の良いきのこ菌が増殖すれば、結果的にはクワガタの栄養になることは間違いがありません。

■ 市販されている菌糸瓶の種類を調べると ■

オガコの種類で分けてクヌギ、コナラ、ミズナラ、ブナなどがあります。

きのこ菌の種類でわけると、オオヒラ茸、ヒラ茸、カワラ茸などがあります。

オガコの種類ときのこ菌との組み合わせで、色々な種類がメーカーから販売されていて、どれを購入したらよいか迷ってしまいます。

メーカーがそれぞれに工夫を凝らしているようですが、一番当たり外れの少ないのは、クヌギ100%、ヒラ茸菌の組み合わせです。

又、木の皮の部分も一緒に粉砕してしまうと、虫の忌避物質(タンニン)がオガコの中に混じってしまい、幼虫にとっても良くありません。

ですからクヌギの皮の部分を剥いてから、粉砕した商品を選ぶべきです。

■ きのこ菌の種類別に言うと ■

オオヒラ茸、ヒラ茸 --- オオクワガタ、ヒラタクワガタなどのドルクス系に向いています。

カワラ茸--------------- タランドス、オウゴンオニクワガタに向いています。

好きな容器に詰められる菌糸瓶

■ 木の種類で言うと ■

クヌギ、コナラ---------- ほとんどの種類に対応しますが、高所に生息するドルクス種には向いていません。

ミズナラ、ブナ---------- ヒメオオクワガタなど、高所に生息するドルクス種に向いています。

■ 菌糸ブロック ■

菌糸ブロックは、好みの容器に自分で、詰め替えが出来る商品です。

あらかじめ、瓶に詰めて売られている商品ではないので、詰め替えにはある程度の手間がかかります。

菌糸ブロックから菌糸瓶を作る場合、瓶に詰め替え、菌糸を新たに増殖させ、使用出来るようになるまでに7~10日かかりますので、買って直ぐに使いたいと言う人には向きません。

菌糸ブロックは、菌糸瓶の自作用はもちろん、パラワンオオヒラタなど大型の成虫を羽化させる目的では、袋から取り出したままの菌糸ブロックを、適度に密封できる飼育ケースに入れて使うこともあります。

市販品で売られていないサイズの菌糸瓶(菌糸容器)を、作ることができますので、大型狙いには最適な商品です。

好きな容器に詰められる菌糸ブロック

■ 菌糸瓶の使い方 ■

菌糸瓶はとてもデリケートで、言わば「生のきのこ」と同じで、取り扱い、保管に注意が必要です。

特に以下の注意が必要です。

・購入して直ぐに幼虫を入れるのはやめましょう。

・25℃以上の環境に置かない。

菌糸瓶は、温度変化や振動を受けると菌糸が活性化して、炭酸ガスを発生させます。

この状態で幼虫を入れることは、空気中でなく、炭酸ガス中に幼虫を入れることになります。

当然、幼虫は苦しくなって表面に出てきてしまい、最悪の場合、死亡させてしまうことも考えられます。

又、高温度の場所に保管すると、菌糸瓶はすぐに腐り始め、表面が黒くなり、ドロドロに溶けてきます。

■ 一番初めにやらなくてはいけないこと ■

「エージング」と言って、環境に慣らすことが必要です。

まず買って来た菌糸瓶を、上下さかさまにした状態で、2~3日置いておきます。

これは炭酸ガスの性質が空気より重いので、逆さまにすることによってフタの隙間から自然に外へ出て行きます。

菌糸瓶のフタは、空気の流通ができて、逆にコバエなど進入できないような構造になっていますので、フタをつけたままひっくりかえせば良いです。

2~3日すると、室温になじみ、炭酸ガスも抜けてしまいます。

常温で使用する場合は、この状態で幼虫を入れることができますが、加温や冷却している場所に置く場合は、その環境温度になじませてから幼虫を投入する必要があります。

■ 菌糸瓶に幼虫を入れる ■

菌糸の扱いはスプーンを用意して、素手では扱わないようにします。
雑菌が入って、青かびが発生し、菌糸瓶内に広がってしまうことがあります。

  1. まずフタをあけると、白い皮膜が見えてきますから、スプーンなどを使って皮膜を全部取り去ります。
  2. 初令、2令ぐらいですと皮膜を取っただけで幼虫を入れることが出来るのですが、3令より大きくなるとフタを閉めたとき、菌糸とフタとの空間が少なく、万が一表面に幼虫が上って来た時に、居場所が無くなってしまいます。

    ですからあまりケチらずに、瓶の肩(中で広くなり始めた場所)までスプーンを使って、全部取り去ってしまいます。

  3. 次に中をのぞくと、あらかじめ中心に穴が開いています。
  4. この穴は、菌糸を増殖させるためには空気が必要で、瓶の底の方まで、まんべんなく菌糸を行き渡らせる為のもので、通常は瓶の底の方まで開いています。

    3令以降の大きい幼虫を入れる場合は、あらかじめ開いている穴を、幼虫の太さよりも大きめにスプーンを使って広げ、幼虫の体長分ぐらいの深さまで堀り下げます。

  5. 幼虫は頭から投入して、自分で潜って行き、体が隠れるまで待ってからフタをします。

幼虫は頭から投入

初令、2令の幼虫を入れる場合は、体が小さいので、あらかじめ開いている穴に投入すると、幼虫が底まで落ちてしまい、増殖する菌糸に巻かれて死んでしまうことがあります。

そこで、あらかじめ開いている穴の横の表面に、幼虫が入る大きさの穴を堀り、幼虫を入れ、フタをします。

幼虫の投入は、あくまでも幼虫が自分で穴に潜って行くのが基本です。

無理に穴に入れても、嫌な場合は表面に出てきたり、潜っても中で暴れてしまい、あっと言う間に菌糸瓶が使えなくなってしまう場合もあります

幼虫が入る程度の穴を堀る

■ 幼虫を入れた容器の一番良い保管場所 ■

菌糸瓶は温度、湿度にとても敏感です。

ヒラ茸、オオヒラ茸の菌糸瓶の使用限界温度は25℃です。 カワラ茸菌糸瓶の使用限界温度は23℃です。

それより高い温度で保管すると、劣化が急速に進み、菌糸が黒く変色してきます。

なるべく18℃~23℃の温度で、日の当たらない、温度変化の少ない場所に保管します。

湿度についても、乾燥しすぎる環境に置くと、菌糸の表面がカラカラに干からびて、やがて下の方まで乾燥し、最後は菌糸全体が収縮して、ビンの内側で一回り小さくなってしまいます。

この状態まで行くと、中の幼虫は生きて行くことができません。

ラックに入れて保管

■ 余ってしまった菌糸瓶の保管場所 ■

菌糸瓶の菌糸はきのこを栽培するベースでもありますから、10℃~18℃程度の環境に置いておきますと、きのこが発生します。

きのこが発生

きのこ自体は有害ではありませんが、菌糸の栄養をきのこに取られてしまいますので、家庭用冷蔵庫の中(7℃前後)で保存すると、安定した状態で保管ができます。

きのこが発生した場合でも、きのこを取り去れば普通に使えます。
又、取り去ったきのこは食べられるそうですが、まるぼランドは食べる勇気がありません。

■ 幼虫投入後の菌糸瓶の交換 ■

初令、2令幼虫の場合、投入後1~2ヶ月を経過すると、瓶の外側に食痕が確認できます。

瓶の外側に食痕が確認

飼育者にとって幼虫を初令、2令で菌糸瓶に投入した場合は、食痕が出てくるまでは、不安でしょうがない時期です。

3令以降で投入した場合は、幼虫の菌糸を食べるスピードが速く、早い時期に食痕を見ることができるのですが、初令、2令の小さい幼虫にとっては、一生懸命食べても、なかなか瓶の外側まで食べ進むことができません。

目安として、初令、2令で幼虫を投入して、2ヶ月待っても食痕が出てこない時は、「大丈夫かな?」と思ったほうがよいでしょう。

そこで菌糸瓶を暴いてみても結果は同じですから、わずかな望みをかけて、我慢してあと1ヶ月、待って見ましょう。

幼虫によっては、菌糸瓶の中心から移動せずに、パクパクと菌糸を食べている幼虫(居食いと言います)もいます。

3ヶ月経過して、食痕が現れない場合、ほとんどの場合、死亡しています。
中を暴いて確認してみて下さい。

菌糸瓶の交換時期

幼虫投入後、およそ3ヶ月、あるいは食痕が菌糸瓶の70パーセント程度になったら交換して下さい。

この時期が交換用の、菌糸瓶を購入するタイミングのサインでもあります。

見た目では、たくさんの菌糸が残っていても、外側の皮1枚だけ残して、中は全部食べてしまっている場合があります。

逆に菌糸瓶の中を暴いて見ると、瓶の周りばかり食べて、中心は残っていると言った、まるでトウモロコシの食べ方みたいな幼虫の場合もあります。

幼虫を投入したばかりの頃と違い、3ヶ月経つと菌糸は既に劣化していますので、勿体ないからと言って、残っている菌糸を寄せ集め、新しく菌糸瓶を1本でも作ろうとしても、菌糸が増殖しません。

これはまるぼランドが実証済みです。

■ 市販されている菌糸瓶の大きさ ■

市販品では、メーカーによって若干の大きさの違いはありますが、小さい方から

  • ・菌糸カップ

    初令幼虫用 投入後1ヶ月程度で大きいサイズに移す必要があります。

  • ・500ml

    初令、2令幼虫用 菌糸カップより長く使えますので、食痕70%見えたら交換。

  • ・850ml

    2令、3令、雌の幼虫など、雄の幼虫では初期の頃に使用するサイズ。

  • ・1500ml

    大きくなる種類の3令中期、後期、蛹化時。

  • ・3000ml

    大きくなる種類の3令中期、後期、蛹化、羽化不全防止。

だいたい以上のサイズが売られています。

■ 羽化までの交換のパターン ■

  1. 菌糸カップ-->850ml-->850ml-->1500ml-->羽化
  2. 550ml-->850ml-->1500ml-->羽化
  3. 850ml-->1500ml-->1500ml-->3000ml-->羽化

虫の種類と性別にもよりますが、羽化する迄に2回~3回の交換が標準です。


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